認識しておかなければならないことは5点ほどありますが、まず、1点目は、社会保険(健康保険)の扶養から外れてしまう可能性があることです。
通常、扶養に入ることができる収入の範囲は、60歳未満の方であれば年収130万円未満、60歳以上の方であれば年収180万円未満となっていますが、障害年金受給中の方はこの範囲が60歳未満の方でも180万円未満となります(60歳以上の方の要件は変わりありません)。
障害年金の年額が180万円を超えるという方は、あまり多くはありませんが、中には超えてしまう方もいらっしゃいますし、また、障害年金のみでは扶養の範囲内だとしても、給与収入など他にも収入がある場合は障害年金額と合わせることになりますので、この扶養の範囲を超えてしまうということもあります。
なお、税金の扶養の場合では、障害年金は非課税となりますので、特に影響はありません。
2点目は、65歳以降に支給される老齢基礎年金が低額になる場合があることです。
2級以上の障害年金に該当すると、その後の国民年金保険料の納付は免除になります。
年金保険料の負担がなくなるのはメリットと感じられるかもしれませんが、保険料が免除になるということは、その分、老齢基礎年金の額は少なくなります。
老齢基礎年金は原則20歳~60歳までの40年間をすべて納めた場合に満額が受け取れる年金ですので、40年の間に免除期間や未納期間があればそれだけ年金額は少なくなってしまいます。ただし、障害基礎年金と老齢基礎年金は、両方とも受け取ることはできませんので、いずれかを選択することになります。
ここでご注意いただきたいのが障害基礎年金の2級の金額と老齢基礎年金の満額は同額だということです。
つまり、障害基礎年金をずっと受けられるのであれば、老齢基礎年金が少なくなっても何の問題もないということになります。
しかし、障害年金は一度決定になれば必ずしもずっと受けられるというものではなく、障害の状態が良くなれば該当しなくなることもあります。
もし、今後、障害の状態が軽快した場合、老後は老齢基礎年金を受給することも考えられるわけです。
なお、手続きすることで免除となった期間の保険料を支払える場合もありますし、また、60歳以降65歳までであれば、国民年金に任意加入し、満額を目指すことも可能です。
ご自身の障害の状態や生活の状況などを考慮しながら、よく検討する必要がありますね。
3点目は、生活保護や傷病手当金を受給している場合には調整が行われることになります。
障害年金と生活保護や傷病手当金は両方を受け取ることはできず、生活保護を受けている方が障害年金を受給した場合、障害年金の金額分だけ生活保護の支給額が減額されます。
また、傷病手当金の場合、障害年金と同じ病気や怪我で傷病手当金を受けている場合は、障害年金の金額分が傷病手当金から差し引かれます。
つまり、せっかく障害年金を受けられるようになっても、その分は調整されることになるので、結果として、受け取る金額は変わらないということになるわけです。
4点目は、配偶者加給年金が停止されることです。
配偶者加給金とは、配偶者がいる老齢厚生年金や障害厚生年金の受給者が対象となる加算で、一定の要件を満たしていれば年額約40万円弱(障害厚生年金の場合は年額約22万円)が年金に加算されます。
しかし、配偶者加給金の対象となっている配偶者が障害年金を受けるようになると、加給金は停止され支給されなくなります。
例えば、老齢厚生(もしくは障害厚生)年金を受けている夫の年金に配偶者加給金が加算されていた場合、妻が障害年金を受けられるようになると夫の年金の配偶者加給金分は停止されることになります。
もちろん、配偶者加給金が停止されても、障害年金の金額のほうが大きいので世帯としての収入は増えることになりますので、デメリットというほどではないかもしれません。
5つ目は、障害年金の2級以上に該当した場合、死亡一時金や寡婦年金が受けられなくなるということです。
国民年金に加入し、一定期間以上納付していた方が、老齢基礎年金を受けることなく死亡した場合、要件を満たせば遺族に対して死亡一時金や寡婦年金という遺族給付が支給されます。
これらの遺族給付は、障害基礎年金を1度でも受けたことがある場合には支給されなくなります。
しかし、やはり金額としては障害年金の方が大きいので、こちらもデメリットというほどでなないように思います。